花元孝二・お前は・・・
目の前に住んでいる花元孝二は今日も金をせびりに来た。
私は毎日この男にたかられているんだ。
この男は外に立って声をあげて叫ぶ。
「あのーすいません。おられますかー?」と、何度も。
たぶんというより絶対に金を貸してくれと言うんだ。
私は出て行って奴の顔を見る。
そしたらやはり金であった。
「明日戻しますから350円・・・貸していただけないでしょうか?」
「毎日俺になぜ金を借りに来るんだ。ないよ。何で毎日俺はアンタに金を払わにゃいかんのだ?」
「明日戻しますから・・・必ずお袋が送ってくるんで・・・明日必ず・・・」
花元孝二に既に7000円貸してある。
だが今日はまた別のことを言いやがった。
「あのーあれありますか?自宅で使うガスのボンベ!」
「カセットコンロのボンベのこと?」
「ああそうです。ありましたら貸してください。」
俺は何でか知らないが玄関にそれが転がっていたので1本渡した。
「これでメシが炊ける!」
奴は微笑んだ。
この不思議な男は恥も外聞もない。
「そんなに借りに来るなら誠意を示せよ!」
「誠意?」
「そうだ。誠意だ。俺と同じように頭を丸刈りにしてみろ。バリカンで・・・そうじゃない。カミソリで全部剃ってみろよ!」
私は自分の帽子をずらして髪の毛のない頭を見せた。
奴は少し馬鹿にした目つきでは私に言った。
「それはちょっと・・・仕事の都合上・・・できません!」
その後奴の背中向かって私は無言で囁いた。
「お前のことは必ず文章にしてやる。お前みたいに不思議な男は見たことがないから!」
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